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音楽大学におけるギターレッスン(再掲)

昭和音楽大学

 前回、再掲しました2006年の記事の続きです。前回の記事と併せてお読みください。

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「音楽大学におけるギターレッスン」
2006-05-30 の記事の再掲載
 以前の記事で僕が教えている音楽大学の生徒には5つの時代から各5曲を毎年学習してもらうことを書きました。その中でもAグループ(ルネッサンス時代)の楽曲として1年生には16世紀スペインのビウエラ・レパートリーを課題として出しています。
 ギターで弾くルネッサンス音楽の作曲家としてよく挙げられるのはダウランドですね。ダウランド以外にもイギリスのリュート曲はたくさんあります。イタリアに目を移せばフランチェスコ・ダ・ミラノ、シモーネ・モリナーロをはじめとした名曲揃いです。
 しかし音楽大学に入学したばかりの1年生にまず勉強してもらいたいのはスペインのビウエラ音楽です。ビウエラはスペインのルネッサンス・リュート・・・とわかりやすく書いてしまいましたが、見た目はリュートというより8の字型をしているのでギターに近いでしょう。弦の数も6コースなので、ビウエラの曲は現代の6弦ギターで問題なく演奏できるのでお勧めです。ただし3弦はギターの調弦をGからF#に変更しなくてはいけませんが。
 音大の学生に与える課題はビウエラのギター用編曲譜をただ演奏してもらうことではありません。もともとビウエラ曲は限られたものしかギター用編曲が出版されてません。<牛を見張れ>とか<皇帝の歌>とか<6つのパバーヌ>など数点しかありません。ギター用に出版されていないけれど名曲というのは数限りなくあるのです。そこで生徒に手渡す資料はオリジナルのタブラチュアのファクシミリです。ビウエラのタブラチュアは俗に言うスペイン式というもので、押さえるフレット番号がアルファベットではなく数字で表されている(現代のポピュラーギターで使われるタブ譜と同じ)なので取っつきやすいのです。
 例えば今年の課題はムダーラの<ファンタジア>を出しました。<演奏容易な~>と注釈がついているものですから、そんなに複雑なものではありません。まずは演奏する前にタブ譜を五線譜に直す作業をしてもらいます。この作業で3弦F#調弦と五線譜との対応関係に慣れてもらいます。さらにもともと多声的に書かれている音楽をいかに楽譜で表さなければならないかも考察しなければなりません。そして生徒自身の手で最終的に五線譜が完成したときには、生徒はこれから練習するファンタジアの声部解釈、アナリーゼなどすべて終わっていることになります。
 もちろんこの手の音楽を耳で理解してもらうために、ジョスカンやパレストリーナ、モラレス、ビクトリアなど同時期の合唱曲を各自図書室で捜して聴いてもらいます。さらに研究熱心な学生には当時の作曲方を学んでもらうために対位法の教科書なども推薦します。
 曲を1曲演奏するために、ただギターを練習するのではなく、さまざまな方向から調査・研究するということを学んで欲しいわけです。生徒はこの作業でカルチャーショックを受けて、大学でのギターの学び方はギター教室のそれとは違うのだと感じてもらえればしめたものなわけです。

Posted by G.Takada

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