今回も高田元太郎公式サイトのブログに2006年に掲載した記事の再掲載です。音大カテゴリーで、カルレバーロ奏法を音大のギター科合同授業で教えている、という内容でした。
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詳解ギター演奏法の原理
2006-06-05 20:47:12 | 音大
「ギター演奏法の原理」はアベル・カルレバーロの著作<Escuela de la Guitarra>の日本語訳で、数年前に現代ギター社から出版されました。翻訳は僕が務めましたが、原著がとても難解に書かれていて分かりやすく書くのにとても苦労した覚えがあります。難しいスペイン語で書かれていると言うことではなく、論理に飛躍があったり、説明不足な部分があったりしていたからです。実際スペイン語圏の人でさえあの本でカルレバーロ奏法を完全に理解したという人は少ないでしょう。
カルレバーロ本人に師事した僕は、彼の奏法・理論はもとよりアベル・カルレバーロという人物をよく理解しています。僕の推測ですがカルレバーロはあの本をあえて不明瞭に書いたのではないでしょうか?サワリだけ書いておいて詳しい内容は本人に習いに来い、という主張なのだと思います。だって本人からカルレバーロ奏法を習ってみると、あの本に書かれていない内容で重要なことが数限りなくあります。あの本を万人にわかるように補足するとそれこそ二倍以上の分量になってしまうのです。
ですから翻訳者として僕がとったスタンスはなるべくパッと読んですんなり頭に入ってくるような分かりやすい文章を心がける。しかし原著に書かれていないことは書き足さない。というものでした。だって行間を埋めるために訳注を入れていたらそちらの分量の方が多くなってしまい、それはもう翻訳という仕事ではなくなってしまいます。そこで翻訳しているときに足りないなあ、こういう訳注が必要だなあと感じたことをすべて現代ギター誌の連載「詳解ギター演奏法の原理」に書きました。2年間の連載となったのでまとめると多分「ギター演奏法の原理」よりページ数が多くなると思います。
この連載ではカルレバーロの奏法だけにとどまらず、フェルナンデスやピエッリが改良したバージョンのカルレバーロテクニックやアイデアなども紹介しました。
でも文章だけでいくら頭で理解してもやはり実際に演奏しながら身につけないといけません。僕のレッスンでは「ギター演奏法の原理」やGGの連載を読んでもらってそれを理解してもらった上で実習に移ります。頭で理解しつつ、それを実習で体得するわけです。
といっても週一回のワンレッスンではどうしても曲中心のレッスンとなってしまうので、そこで活用しているのが週3コマ(4時間半)ある合同授業の時間です(音大での話です)。この授業でカルレバーロ奏法の講義を行ってテクニック理論を理解してもらい、そしてその内容についての実習を行います。毎回黒板に書ききれないほど板書します。生徒はノートに書き写すのに躍起になっていますが、大学の講義とはそんなものです。なによりも個人レッスンで一人ずつに同じことを教えるより効率的です。最近は副読本は「ギター演奏法の原理」よりフェルナンデスの「Tecnica,Mecanizmo y Aprendizaje」を使っています。こちらのほうがより詳しいですから。
といってもこの授業は音大生限定なので興味ある方はGGでの連載記事をバックナンバーなどで探してみてくださいね。
Posted by G.Takada